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中国恒大集団問題。
これは、中国経済の変化点になると考える

ここの所、連日、中国恒大集団の不動産のデフォルト問題が日本でも大きく話題になっています。

私は不動産業者として、常に中国の不動産の動向をチェックしてまいりました。なぜなら、中国マネーは東京にも多く流入し、日本の市場にも影響を与えると考えて来たからです。

中国恒大集団は、1996年創業、社員12万3000人、売上年間8兆6千億円、中国民間企業500社中5位。
現在、次々に来る外債や中国人向けに発行した理財商品の償還に対し、不払い状況になっている。負債総額33兆円との事である。

この問題の本質は、現在の中国の強さの源泉にも至る問題があると私は考えております。すなわち、中国の地方政府の財源の40%〜50%は、地方政府が不動産開発業者に売却する土地使用権の収入でまかなわれている、大きな現実がございます。土地の所有は中国政府であり、その土地使用権(70年)の売却です。

毎年毎年、地方政府はより大きな収入が必要になり、少しずつ使用権の売却価格を上げていく。したがって市民が購入するマンション価格も、建築資材や人件費の上昇により上がっていく。そして街は立派になり、夢の近代的な広い住宅に住み、高層階から眼下の発展した街並みをながめる。米国と肩をならべる強国になり、多少の表現の自由を我慢すれば、超競争社会の厳しさはあっても、十分幸福感を実感できる。こんな姿の中国の限界点が来ていると私は考えております。

中国では、2021年のマンション価格は、2011年のマンション価格の5倍になっております。

■今や大都市部(北京、上海etc)は、中古住宅と言えど、約30坪で年収の50倍と言われています。
中国都市部のサラリーマンの普通の方の年収は200万円と言われています。すなわち、中国政府所有の使用権土地の中古マンションが1億円の世界が現実の話です。
わかりやすく東京の例に引きなおすと、文京区の中古マンションが3億円〜3.5億円との事になるわけです。

■おまけに中国では、若者が結婚する条件とし、住宅(マンション)を持っている事がポイントになります。一人子政策により、男女比で男性の方が多い現状があり、親は何としても結婚してもらうためには、マンション取得に協力や、資金の出し手になるわけです。若い夫婦は共働きで、その子供の世話は、どちらかの両親が協力する。一族発展のために皆で協力する。これが現在の中国の都市部の生き方です。

しかし、さすがにここまで住宅不動産が高騰すると、お金のない者はおきらめざるを得ない、勿論結婚も望めない。運よくこれらをクリアーしても、高い教育熱で幼少より各種塾通い。
「格差拡大」により、中国政府も黙認・容認できる状況を超え、これらを放置しておけばやがて批判が次々と上がり、政権自体もあやうくなるとの結論にいたり、今回習近平氏は、「共同富裕」と言うスローガンを大きくかかげ、格差問題の解決なくして中国の発展なしとの結論にいたったと考えます。

中国は10世帯に2〜3世帯は、自宅以外に2〜3戸のマンションを所有していると言われています。中国人にとっての投資の一番の身近は、マンション投資なのです。
中国人は生活資金を確保し、それ以外の“お金”は投資してお金に働かせる考え方です。
現在問題になっている中国恒大集団の10%前後の利回りの理財商品にしても、7万人の人が投資しており、本社前に不安にかられた投資家が集まっている状況です。

これは恒大集団だけでなく、他の不動産会社も似たりよったりの事をしております。中国では、確認申請してまだ青田(完成前)に代金全額を支払う商習慣もある様で、代金は支払ったがマンションの引き渡しがなされていない。この様な問題はすべて、批判の先は国の土地を売却した地方政府や、その上の中央政府や中国共産党に行くわけです。なぜなら政治は、共産党にまかす、国民はお金持ちを目指す。その代わり政権批判はしない。したがって「理財商品」のトラブルも「マンション引き渡しが出来ないのも」すべて、政府の方に矢が行くわけです。

中国人の商売は、圧倒的なスピード感と全力でそれに賭ける集中力です。今回の中国恒大集団の問題は、良くも悪くも中国人の生き方、あり方が出たと考えます。

この問題やこれに続く不動産会社の問題は、中国政府により管理された破綻の方に、ゆっくりと進むと考えます。

中国には、まだ日本の様な“固定資産税”はないと聞いております。中国の軍事増強も、中央アジアからアフリカへの「一帯一路」政策も、つまる所そのお金の出所は、国の土地の使用権を不動産開発会社に販売したのがベースであり、これ以上住宅価格を上げられない。すなわち地方政府の売却土地価格を下げざるを得ない。したがって税収不足や高齢化にともなう年金や医療や介護の問題をどう乗り超えるの?私は中国共産党指導部の動きを注視しています。

中国は近隣諸国に反発をくらいながら“領土”や“人権”もすべて国内問題と言い切り、中国になびく国のみと協力、支援、貿易強化していこうと言う中国政府の強気の根源も、“国の土地の使用権の売却”より生じていると私は考えます。

したがって、もう不動産価格は上がれない、または下落するとの流れが出た時、中国国内では投資目的所有のマンションの一部は売却に動くと考えられ、中国人の富裕層の“爆買い消費”も弱くなり、中国の高成長から低成長へ舵を切らざるを得なくなり、日本が「昭和の高度成長」から「平成の低成長停滞」に変わった様に、中国も今回の中国恒大集団の出来事が中国の歴史の中での大きなターニングポイントになると私は考えております。

私は世界各国が、経済ショックをやわらげるため、中央銀行より通貨の過剰発行により、世界中で住宅価格が高騰を見せ、消費を冷えこませ、人々を苦しめている現状に対し政治はあまりにも無策で無関心と考えます。日本の住宅ローン減税などはないよりましですが、大怪我に対し、傷にバンソウコウを貼っている様なものと考えております。

“住問題”は人間の基本問題であると考えております。
コロナは収束しつつあります。皆様の御健勝祈っております。


2021年 10月吉日
(有)花鳥<不動産>  代表取締役  齊藤 忠男
 

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